$\{r^n\}$ の極限(公比が文字定数)

問題

$r \neq -1$ のとき,数列 $\left\{\dfrac{r^n+1}{r^n-2}\right\}$ の極限を求めよ。

前やったのと同じような問題ですね。こういう場合は,分母と分子を $r^n$ で割って,\[
\dlim{n \to \infty}\dfrac{r^n+1}{r^n-2}
= \dlim{n \to \infty}\dfrac{1+\left(\dfrac{1}{r}\right)^n}{1-2 \cdot \left(\dfrac{1}{r}\right)^n}
\]で,数列 $\left\{\left(\dfrac{1}{r}\right)^n\right\}$ は $0$ に収束するので,答は $1$ です。簡単,簡単。

数列 $\left\{\left(\dfrac{1}{r}\right)^n\right\}$ が $0$ に収束するって,本当に大丈夫かな?

どういうことですか?

例えば,$r=0.1$ のときはどうなる?

\[
\dfrac{1}{r}=\dfrac{1}{0.1}=10
\]だから,$\left(\dfrac{1}{r}\right)^n=10^n$ になって……,あ,発散する!

もしかして……場合分け?

その通り。さて,どう場合わけすればいいか。それは「無限等比数列の極限」の講座のまとめを見て考えよう。

こちらの講座ですね。

えっと,$\{r^n\}$ の極限は,$r>1$ のとき, $r=1$ のとき, $-1<r<1$ のとき, $r\leqq -1$ のときでそれぞれ違うから,この4つに場合分けすればいいんですね。

$r=-1$ のときと $r<-1$ のときは,同じ振動でも $1$ と $-1$ を行ったり来たりする場合と,正と負を繰り返しながらどんどん $0$ から離れていく場合とで少し振る舞い方が違うので,この2つの場合に分けて考えたほうがいいよ。ただし,この問題は条件に $r \neq -1$ とあるから,$r=-1$ の場合は考えなくていいよ。

わかりました。$r>1$ のときは,さっき僕がやった感じでいいですか?

いいよ。

$r=1$ のときは代入すればいいのかな?\[
\dlim{n \to \infty}\dfrac{1^n+1}{1^n-2} = \dfrac{2}{-1}=-2
\]あ,できた。

それでOKだ。

$-1 < r < 1$ のときは,$\dlim{n \to \infty}r^n=0$ だから,\[
\dlim{n \to \infty}\dfrac{r^n+1}{r^n-2}=\dfrac{0+1}{0-2}=-\dfrac{1}{2}
\]だ!

いいね。

$r < -1$ のときは,\begin{align*}
\dlim{n \to \infty}\dfrac{r^n+1}{r^n-2}
&= \dlim{n \to \infty}\dfrac{1+\left(\dfrac{1}{r}\right)^n}{1-\left(\dfrac{2}{r}\right)^n}\\
&=\dfrac{1+0}{1-0} = 1
\end{align*}でいいんですか?

$\left\{\left(\dfrac{1}{r}\right)^n\right\}$ が $0$ に収束すると考えたんだね。それはどう説明する?

$r < -1 $ のときは,$-1 < \dfrac{1}{r} < 0$ だからです。

そうだね。よくできました。では解答を清書しよう。

解答

  1. $r>1$ のとき,$\dlim{n \to \infty}\left(\dfrac{1}{r}\right)^n=0$ であるから,\[
    \dlim{n \to \infty}\dfrac{r^n+1}{r^n-2}
    =\dfrac{1+\left(\dfrac{1}{r}\right)^n}{1-2 \cdot \left(\dfrac{1}{r}\right)^n}
    = 1 \cdots (答)
    \]
  2. $r=1$ のとき,\[
    \dlim{n \to \infty}\dfrac{r^n+1}{r^n-2}
    =\dlim{n \to \infty}\dfrac{1^n+1}{1^n-2} = \dfrac{2}{-1}=-2 \cdots (答)
    \]
  3. $-1 < r < 1$ のとき,$\dlim{n \to \infty}r^n=0$ であるから,\[
    \dlim{n \to \infty}\dfrac{r^n+1}{r^n-2}
    = \dfrac{0+1}{0-2}=-\dfrac{1}{2} \cdots (答)
    \]
  4. $r<-1$ のとき,$-1 < \dfrac{1}{r} < 0$ より $\dlim{n \to \infty}\left(\dfrac{1}{r}\right)^n = 0$ であるから,\[
    \dlim{n \to \infty}\dfrac{r^n+1}{r^n-2}
    =\dfrac{1+\left(\dfrac{1}{r}\right)^n}{1-2 \cdot \left(\dfrac{1}{r}\right)^n}
    = 1 \cdots (答)
    \]

ちなみに,$r>1$ の場合と $r<-1$ の場合は,やっていることは同じなので,ひとつの場合にまとめてもいいよ。

深いトコ

ちなみに $r=-1$ のとき,この問題の数列がどのような振る舞いをするかわかるかな?

振動じゃないんですか?

きちんと調べてみて。

$n=1$ のときが\[
\dfrac{(-1)^1+1}{(-1)^1-2}=0
\]$n=2$ のときが\[
\dfrac{(-1)^2+1}{(-1)^2-2}=-2
\]それから……

わかった! $(-1)^n$ は $n$ が奇数のときはいつも $-1$ で,偶数のときは $1$ になるから,この数列は $0$ と $-2$ が交互に出てくる数列。やっぱり振動だ。

そうだね。