漸化式 $a_{n+1}=pa_n+q$ ($p$, $q$ は定数) の解法

問題

次の条件によって定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ。\[
a_1 = 6, \quad a_{n+1}=2 a_n – 3
\]

$a_{n+1}=a_n-2$ だったら公差 $-2$ の等差数列,$a_{n+1}=3a_n$ だったら公比 $3$ の等比数列だけど……

$a_n$ の前に係数 $3$ がついていて,おまけに後ろに $-2$ もついている。等差でも等比でもないとなると,難しいぞ,これは。

そう。「等差数列でも等比数列でもなければ難しい数列だ」というその判断はいいね。さて,そんな未知の数列を相手にするときにまずやるべきことは?

並べてみます!\begin{align*}
a_1 &= 6 \\
a_2 &= 2 a_1 -3 = 2 \cdot 6 – 3 = 9 \\
a_3 &= 2 a_2 -3 = 2 \cdot 9 – 3 = 15 \\
a_4 &= 2 a_3 -3 = 2 \cdot 15 – 3 = 27 \\
a_5 &= 2 a_4 -3 = 2 \cdot 27 – 3 = 51
\end{align*}だから\[
6, 9, 15, 27, 51, \cdots
\]で……,わかりませんっ!

じゃあ,今並べた数字のそれぞれの項から $3$ をひいたものを並べてみて。

\[
3, 6, 12, 24, 48, \cdots
\]だから……あっ!

等比数列だ!

私もわかったのに!

この数列を $\{b_n\}$ とすると,その第 $n$ 項 $b_n$ はどうなる?

初項が $3$ で,公比が $2$ だから,\[
b_{n+1} = 3 \cdot 2^{n-1}
\]です。

ところで,この数列 $\{b_n\}$ の各項は $\{a_n\}$ の各項から $3$ をひいたものだったよね?

はい。

ということは,$b_n = a_n-3 $が成り立つから,$a_n$ は?

$a_n=b_n+3$ だから,$a_n=3 \cdot 2^{n-1}+3$ です。

それで正しいか,確かめてみよう。

\begin{align*}
a_1 &= 3 \cdot 2^{1-1} + 3 = 6 \\
a_2 &= 3 \cdot 2^{2-1} + 3 = 9 \\
a_3 &= 3 \cdot 2^{3-1} + 3 = 15 \\
a_4 &= 3 \cdot 2^{4-1} + 3 = 27 \\
a_5 &= 3 \cdot 2^{5-1} + 3 = 51
\end{align*}さっき求めたものと全部一致しました!

ところで,最初 $3$ をひいたのが何故なのかわからないんですけど……。

そうだろうね。もうちょっと詳しくみてみよう。最初に与えられた漸化式 $a_{n+1}=2a_n – 3$ の両辺から $3$ を引くとどんな式になる?

$a_{n+1} – 3 = 2a_n -6$ です。

右辺を $2$ でくくると?

$a_{n+1} – 3 = 2(a_n – 3)$ です。

数列 $\{b_n\}$ の各項は $\{a_n\}$ の各項から $3$ をひいたものだったから,\[
b_n = a_n-3
\] が成り立つというのはさっき言ったけど,同じことが第 $n+1$ 項にもいえるから,\[
b_{n+1}=a_{n+1}-3
\] も成り立つ。これらを用いて,$a_{n+1} – 3 = 2(a_n – 3)$ を $b_{n+1}$ と $b_n$ を用いて表すと?

$b_{n+1}=2b_n$ です。

これって, $\{b_n\}$ は公比 $2$ の等比数列であることを表している?

そうだね。さっきは初項から第5項までをみて等比数列であると推測したに過ぎないのだが,これで等比数列であることをきちんと示すことができている。

それはわかったんですが,なんで $3$ をひいたのかが,まだわからないんですけど……

このような結論に持ち込むことができたのは,\[
a_{n+1}-3 = 2(a_n-3)
\]のように, $a_n$ と $a_{n+1}$ から同じ数 $3$ をひいた $a_n-3$ と $a_{n+1}-3$ のみを用いた形に変形できたことが突破口になった。この $3$ という数が分からないのであれば,仮にそれを $x$ として,\[
a_{n+1}-x = 2(a_n-x)
\]という式を作って,この式と与えられた漸化式から $c$ の値を求めれば良い。

$a_{n+1} = 2 a_n -3 $ と $a_{n+1}-x = 2(a_n-x)$ を連立するんですか?

そうだね。\begin{align*}
a_{n+1} &= 2 a_n-3 \\
a_{n+1}-x &= 2(a_n-x)
\end{align*}の各辺を引き算するとどうなる?

下の式の右辺は展開して\begin{align*}
a_{n+1} &= 2 a_n-3 \\
a_{n+1}-x &= 2a_n-2x
\end{align*}だから,ひくと\[
x = 2x-3
\]です。

その式は,どこかの式に似てない?

与えられた漸化式の形に似てる!

そうなんだ。そして,この $x=2x-3$ を $x$ について解くと,さっきから話題の $3$ という値が出てくる。

本当だ。

まとめると,次のようになる。

漸化式 $a_{n+1} = pa_n + q$ の解法

方程式 $x= pc + q$ を満たす $x$ を与えられた漸化式の両辺から引くと,\[
a_{n+1}-x = p(a_n-x)
\]と変形できる。この式から数列 $\{a_n-x\}$ が公比 $p$ の等比数列であることが分かるから,それを利用する。

ちなみに,この $x = px+q$ という方程式を,漸化式 $a_{n+1}=pa_n + q$ の特性方程式という。さあ,問題の解答だ。

解答

$a_{n+1}=2a_n -3$ の両辺から $3$ をひくと\begin{align*}
a_{n+1} &= 2a_n – 6 \\
&= 2(a_n-3)
\end{align*}よって,数列 $\{a_n-3\}$ は公比 $2$ の等比数列であり,その初項は\[
a_1 – 3 = 6 -3 = 3
\]であるから,\[
a_n – 3 = 3 \cdot 2^{n-1}
\]したがって\[
a_n = 3 \cdot 2^{n-1} + 3 \cdots (答)
\]

$x = 2x-3$ のところは解答に書かないんですね。

それは書かなくていいよ。


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