関数の極限

問題

次の関数の極限を求めよ。

  1. $\dlim{x \to 1}(x+1)$
  2. $\dlim{x \to 1}\dfrac{x^2-1}{x-1}$

また難しい記号が出てきました。$\dlim{}$…リム?

「リミット」と読むよ。「極限」という意味だ。微分という考えを導入するためにどうしてもこの「極限」という考えが必要になる。

なんだか難しそうですね。

きちんとやると,本当に難しいよ。でも,ここでは直感的な理解に留めておく。数学IIIでもう少し詳しく学ぶんだが,そこでも直感的な理解で済ませてしまう。

数学は厳密な学問だって言われてるのに……。

極限についての厳密な議論は大学までおあずけということになっている。

で,極限ってなんなんですか?

例えば,$y=x+1$ という関数を考える。$x$ の値を,$1.1$,$1.01$,$1.001$ としたときの $y$ の値を調べるとどうなる?

$2.1$,$2.01$,$2.001$ です。

では,$x$ の値を,$0.9$,$0.99$,$0.999$ としたときの $y$ の値は?

$1.9$,$1.99$,$1.999$ です。

どちらの場合も,$x$ の値はだんだん $1$ に近づけていたんだが,$y$ の値はどう変化しているかな?

$2$ に近づいているような気が……。

そうだね。$x$ の値を $1$ に近づけたとき,$x+1$ の値は $2$ に近づく。このとき,「$x$ を $1$ に近づけたときの $x+1$ の極限は $2$ である」というんだ。このことを次のような式で表す。\[
\dlim{x \to 1}(x+1) = 2
\]

ということは,(1)の答えは $2$ ですね。

そのとおり。

でも,よく考えたら,$x$ が $1$ のとき,$x+1$ の値は $2$ になるから,結局そのまま計算すればいいだけなんじゃないですか?

まあ,これはそうなるんだけどね。

じゃあ,なんでわざわざ「近づける」なんて回りくどいことをいうんですか?

それでは,(2)を考えてみよう。$x$ に $1$ をそのまま代入していいのかな?

$\dfrac{1^2-1}{1-1}$ で……,おっと,分母が $0$ になるぞ。これは,解なしとか?

本当にそうかな? 電卓を使ってもいいので,さっきと同じように,$x$ の値を $1.1$,$1.01$,$1.001$ と変化させてみよう。

えっと。$x$ が $1.1$ のときは,\[
\dfrac{1.1^2-1}{1.1-1}=\dfrac{0.21}{0.1}=2.1
\]で,次は……

読者の皆さんも,是非やってみてくださいね。苦労して理解したことは忘れにくい。特に,自分の手で確かめたことならなおさらです。逆に,「すぐわかる」は「すぐ忘れる」かもしれないから気をつけて!

できました!\begin{align*}
\dfrac{1.01^2-1}{1.01-1}=\dfrac{0.0201}{0.01}&=2.01\\
\dfrac{1.001^2-1}{1.001-1}=\dfrac{0.002001}{0.001}&=2.001
\end{align*}ですっ!

あれ,もしかして $2$ に近づいている?

そうなんだ。このことは次のような計算で求めることができる。\begin{align*}
\dlim{x \to 1}\dfrac{x^2-1}{x-1}
&=\dlim{x \to 1}\dfrac{(x+1)(x-1)}{x-1}\\
&=\dlim{x \to 1}(x+1) = 2\end{align*}

なるほど,式変形してから代入すれば良かったのか。

計算方法はそうだね。だが,最初の式 $\dfrac{x^2-1}{x-1}$ に$x=1$ を代入することはできないので「$x=1$ のときの値」と言うわけにはいかない。だから,「$x$ を $1$ に近づけたときの値」という言い方をする。今はその程度に捉えておいていいよ。一応,解答を整理しておこう。

解答

\[
\dlim{x \to 1}(x+1)=2 \cdots (\text{答})
\]

\begin{align*}
\dlim{x \to 1}\dfrac{x^2-1}{x-1}
&=\dlim{x \to 1}\dfrac{(x+1)(x-1)}{x-1}\\
&=\dlim{x \to 1}(x+1) = 2\cdots (\text{答})\end{align*}