無限等比数列の極限


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問題

次の数列の極限を調べよ。

  1. $\{2^n\}$
  2. $\left\{\left(\dfrac{1}{2}\right)^n\right\}$
  3. $\left\{\left(-\dfrac{5}{2}\right)^n\right\}$
  4. $\left\{\left(\sqrt{2}-2\right)^n\right\}$

これまで,一般項が整式・分数式・無理式で表される数列の極限を考えてきた。この問題は,どれも一般項が $r^n$ の形で表されている。$n$ が指数になっているのが特徴だね。これはどういう数列になるか分かるかな?

$r, r^2, r^3, \cdots $ となるから,初項が $r$, 公比も $r$ の等比数列です。

そうだね。というわけで,今回は無限等比数列の極限について考えるよ。

これはそんなに難しくないぞ。 (1)は\[
2, 4, 8, 16, \cdots
\]と限りなく大きくなるから極限は正の無限大!

(2)は\[
\dfrac{1}{2}, \dfrac{1}{4}, \dfrac{1}{8}, \cdots
\]これは,$0$ に収束ね。

(3)は\[
-\dfrac{5}{2}, \dfrac{25}{4}, -\dfrac{125}{8}
\]通分すると\[
-\dfrac{20}{8}, \dfrac{50}{8}, -\dfrac{125}{8}
\]だから,これは振動?

(4)は?

えっと,初項が $\sqrt{2}-2$ で,第2項は $(\sqrt{2}-2)^2$ だから……

これまでと同じように並べて考えるのはちょっと面倒ですね。

そこで数列 $\{r^n\}$ の極限について次のようにまとめておく。これを覚えておくといいよ。

数列 $\{r^n\}$ の極限

  • $r>1$ のとき,正の無限大に発散
  • $r=1$ のとき,$1$ に収束
  • $-1<r<1$ のとき,$0$ に収束
  • $r \leqq -1$ のとき,極限なし

詳しい証明は後でやることにするが,この事実を利用すると(4)にも答えられるね。

$1 < \sqrt{2} < 2 $ から $-1 < \sqrt{2}-2 < 0$ 。ということは,$-1 < \sqrt{2}-2 < 1$ も成り立つので,$0$ に収束!

よくできました。では解答を清書しよう。

解答

  1. $2 > 1$ であるから,正の無限大に発散
  2. $-1 < \dfrac{1}{2} < 1$ であるから,$0$ に収束
  3. $-\dfrac{5}{2}<-1$ であるから,極限なし
  4. $1 < \sqrt{2} < 2 $ より $-1 < \sqrt{2}-2 < 0$ であるから,$0$ に収束

深いトコ

上でまとめた数列 $\{r^n\}$ の極限について,きちんと示しておこう。もう一度表示しておくよ。

数列 $\{r^n\}$ の極限

  • $r>1$ のとき,正の無限大に発散
  • $r=1$ のとき,$1$ に収束
  • $-1<r<1$ のとき,$0$ に収束
  • $r \leqq -1$ のとき,極限なし

直感的には,$y=r^x$ のグラフを考えてもらえばいい。

$r>1$ の場合(左のグラフ)をみるとわかるように,$x$ の増加に伴って $y$ の値がどんどん増えていく。しかもその増加のスピードも増えていくことは指数関数を学んだときに理解してもらっていると思う。このグラフからも,数列 $\{r^n\}$ は $r>1$ のときに正の無限大に発散するというのは想像がつきやすいだろう。きちんと証明するには,$h=r-1>0$ とおいて,すべての自然数$n$ について $r^n>1+nh$ であることを用いる。

$h > 0 $のとき $\dlim{n \to \infty}nh = \infty$ はすぐ分かるので,それより大きい $r^n$ も正の無限大に発散ということですね。

その通り。

グラフに戻って,$0 < r < 1$ の方のグラフをみると,このとき $0$ に収束するというのもなんとなくわかりますね。

そうだね。$0 < r <1$ のときは,$\dfrac{1}{r}>1$ になるから $\left\{\left(\dfrac{1}{r}\right)^n\right\}$ が正の無限大に発散する。だから,その逆数の数列である $\{r^n\}$ は $0$ に収束するといえる。

$\dlim{n \to \infty}\zettaiti{a_n}=\infty$ のとき,$\dlim{n \to \infty}\dfrac{1}{a_n} = 0$ でしたね。

そうだね。次に,$-1 < r < 0$ のときだが,このときも $\zettaiti{\dfrac{1}{r}}>1$ より,$\dlim{n \to \infty}\zettaiti{\left(\dfrac{1}{r}\right)^n}=\infty$ なので,$\dlim{n \to \infty}r^n = 0$ が導かれる。

$r=0$ のときは,\[
0, 0, 0, \cdots
\]と,$0$ がずっと続く数列なので極限は $0$。

これで, $-1 < r < 1$ の範囲内のすべての $r$ について数列 $\{r^n\}$ は $0$ に収束するということがわかったね。次に $r=1$ のときだが,これはわかりやすいよね。

$r=1$ だから,数列 $\{r^n\}$ は\[
1, 1, 1, \cdots
\]と,ずっと $1$ が続く数列になるので,極限は $1$

それでいいね。じゃあ,$r=-1$ のときは?

\[
-1, 1, -1, 1, \cdots
\] これは振動ですね。

そうだね。最後は $r<-1$ の場合だが,このときは $\zettaiti{r}>1$ なので,$\dlim{n \to \infty}\zettaiti{r}^n = \infty$ なんだが,$r$ が負の数なので,実際の数列は正の数と負の数が交互に出てくる。

正と負を繰り返しながら,絶対値がどんどん大きくなるから振動ですね。

その通り。

とても深いトコ

極限の厳密な定義が理解できていれば,$r>1$ のとき $\dlim{n \to \infty}r^n = \infty$ であることは次のように示すこともできる。

証明

$r > 1 $のとき,どんな正の数 $M$ についても,$N=\log_r M$ とすると,\[
n \geqq N \Rightarrow r^n \geqq r^N = M
\] が成り立つ。したがって,$\dlim{n \to \infty}r^n = \infty$ (証明終)

対数の定義\[
N=\log_r M \iff r^N = M
\]を使ったよ。