漸化式と極限

問題

次の条件によって定められる数列 $\{a_n\}$ の極限を求めよ。\[
a_1 = 6, \quad a_{n+1}=\dfrac{1}{2}a_n+1
\]

漸化式ニガテ……。

……という人も多いみたいだけど,「やり方を覚える」ことと「意味が分かる」ことの両方のアプローチで攻略しよう。詳しくは,下の講座で。

思い出したぞ。特性方程式 $x= \dfrac{1}{2}x+1$ を解いて $x=2$ だから, 漸化式の両辺から $2$ をひいて\[
a_{n+1}-2 = \dfrac{1}{2}a_n-1
\]すなわち\[
a_{n+1}-2 = \dfrac{1}{2}(a_n-2)
\]と変形できる。

この式は,数列 $\{a_n\}$ の各項から $2$ をひいてできる数列 $\{a_n-2\}$ が公比 $\dfrac{1}{2}$ の等比数列であることを意味するんでしたね。

そして,数列 $\{a_n – 2\}$ の初項は $a_1 – 2$ だから $4$ になる。

そう。実際に与えられた初項と漸化式から数列 $\{a_n\}$ の第4項まで求めてみると\[
6, 4, 3, \dfrac{5}{2}
\] となるが,各項から $2$ をひくと\[
4, 2, 1, \dfrac{1}{2}
\] と,初項 $4$,公比 $\dfrac{1}{2}$ の等比数列になることが分かるね。

だから,$\{a_n-2\}$ の第 $n$ 項は\[
a_n – 2 = 4 \cdot \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}
\]となり,これより\[
a_n = 4 \cdot \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1} + 2
\]

で,問題の答は?

$\dlim{n \to \infty}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}=0$ だから,答は $2$ です!

よし,いいだろう。漸化式さえ解ければ,難しくないね。

解答

$a_{n+1}=\dfrac{1}{2}a_n+1$ より\begin{align*}
a_{n+1}-2 &= \dfrac{1}{2}a_n-1\\
&= \dfrac{1}{2}(a_n-2)
\end{align*}であるから,数列 $\{a_n-2\}$ は公比 $\dfrac{1}{2}$ の等比数列であり,\[
a_1 – 2 = 6-2 = 4
\]であるから数列 $\{a_n-2\}$ の初項は $4$。したがって\[
a_n – 2 = 4 \cdot \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}
\]となるから,\[
a_n = 4 \cdot \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}+2
\]よって,\[
\dlim{n \to \infty}a_n = 2 \cdots (答)
\]

深いトコ

さて,問題で考えたような漸化式で表された数列の極限について,図を用いて考えてみよう。次のボタンを押すと図が現れるよ。以下,同じようなボタンが出てきたら押すと,図が更新されていくから確認してね。

直線 $y=\dfrac{1}{2}x+1$ (青色)上の $x$ 座標が $6$ のところを $\textrm{A}_1$ とする。この $6$ というのは,問題に出てきた数列 $\{a_n\}$ の初項だ。すると,この点 $\mathrm{A}_1$ の $y$ 座標は?

$y=\dfrac{1}{2} \cdot 6 +1$ で,$y$ 座標は $4$ です。

そうだね。では,点 $\mathrm{A}_1$ を通り $x$ 軸に平行な直線が,直線 $y=x$ と交わる点を $\mathrm{B}_1$ とする。この $\mathrm{B}_1$ の $x$ 座標は?

点$\mathrm{B}_1$ は,$y$ 座標が $4$ で,直線 $y=x$ 上にあるから,$x$ 座標も $4$ です。

そうだ。今度は,点$\mathrm{B}_1$ を通り $y$ 軸に平行な直線が,直線 $y=\dfrac{1}{2}x+1$ と交わる点を $\mathrm{A}_2$ とする。もちろん $\mathrm{A}_2$ の $x$ 座標も $4$ だが,$y$ 座標は?

$y=\dfrac{1}{2} \cdot 4 + 1 = 3$ です。

そうだね。では,同様に点$\mathrm{B}_2$,点$\mathrm{A}_3$ をとるよ。このとき,点 $\mathrm{A}_3$ の$x$ 座標は?

$\mathrm{A}_2$ や $\mathrm{B}_2$ の $y$ 座標と同じになるから,$3$ です。

そうだね。では,$\mathrm{A}_3$ の $y$ 座標は?

$y=\dfrac{1}{2} \cdot 3 + 1 = \dfrac{5}{2}$ です。

そうだ。そして,また同様に点$\mathrm{B}_3$,点$\mathrm{A}_4$ をとると,点 $\mathrm{A}_4$ の$x$ 座標も $\dfrac{5}{2}$ になるよね

あれ,この数字の並びって……。

さっきの問題の数列 $\{a_n\}$ の初項から第4項だ!

もう気づいたね。では,この操作を限りなく繰り返していくと,点 $\mathrm{A}_n$ はどこに近づいていくかな?

2つの直線 $y=x$ と $y=\dfrac{1}{2}x+1$ の交点?

そうだ。そしてその交点を $ \mathrm{P}$ とすると,その $x$ 座標は?

$y=x$ と $y=\dfrac{1}{2}x+1$ を連立して\[
x = \dfrac{1}{2}x+1
\]だから,$2$ !

これって,さっきの問題の答と同じですね。

そう,$\mathrm{A}_1, \mathrm{A}_2, \mathrm{A}_3,\cdots $ という点の列が,どんどん点 $\mathrm{P}$ に近づいていくということと,問題の数列 $\{a_n\}$ が $2$ に収束していくというのが見事に対応しているんだ。あと,もう一つ何か気づいたことはないかな? さっき交点 $\mathrm{P}$ の座標を求めるときの途中の計算式なんだが……

これは……特性方程式!

そうなんだ。いろんなことがつながってるんだね。