無限級数

問題

次の無限級数が収束することを示し,その和を求めよ。\[
\dfrac{1}{1 \cdot 4}+\dfrac{1}{4 \cdot 7}+\dfrac{1}{7 \cdot 10}
+ \cdots + \dfrac{1}{(3n-2)(3n+1)} + \cdots
\]

無限級数って何ですか?

無限数列 $\{a_n\}$ の項を順に全て足したもの\[
a_1 + a_2 + a_3 + \cdots
\]を無限級数(infinite series)という。

無限にあるのに全て足すことなんてできるんですか?

うっ,なかなかスルドイ指摘。ここでは,「無限数列 $\{a_n\}$ の項を順に $+$ の記号で結んだもの」と,あくまで形式的ものと捉えて欲しい。$\retuwa{n=1}{\infty}a_n$ というような記号で表すこともある。

形はわかったんですけど,これって意味あるんですか?

そうだね。無限級数をその意味も含めてきちんと定義すると次のようになる。

無限級数とその和

無限数列 $\{a_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和を $S_n$ とし,この $S_n$ を第 $n$ 項とする新たな数列 $\{S_n\}$ を考える。

  • 数列 $\{S_n\}$ が $S$ に収束する(すなわち $\dlim{n \to \infty}S_n = S$ となる)とき,無限級数 $a_1 + a_2 + a_3 + \cdots $ は収束するといい,$S$ をこの無限級数のという。
  • 数列 $\{S_n\}$ が発散するとき,無限級数 $a_1 + a_2 + a_3 + \cdots $ は発散するという。

また,$S_n$ を無限級数 $a_1+a_2+a_3+\cdots$ の部分和という。

上の定義の中で出てきた無限級数の和 $S$ を表す記号として$\retuwa{n=1}{\infty}a_n$ を使うこともある。

無限級数を表す記号でもあり,その和を表す記号でもある。なんか混乱しませんか?

もちろん,混乱しないように使う。これから使っていく中で慣れていこう。

で,実際に無限級数の和って,どうやって求めるんですか?

部分和 $S_n$ を求めて,その極限を考える。

部分和って,初項から第 $n$ 項までの和のことですよね?

だったら,できるぞ! これは部分分数分解すればいいんだ!

そういえば,そんなのありましたね。

任意の自然数 $k$ について\[
\dfrac{1}{(3k-2)(3k+1)}=\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{3k-2}-\dfrac{1}{3k+1}\right)
\]が成り立つことを用いて,\begin{align*}
&\dfrac{1}{1 \cdot 4}+\dfrac{1}{4 \cdot 7}+\dfrac{1}{7 \cdot 10} + \cdots + \dfrac{1}{(3n-2)(3n+1)}\\
&= \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{1}-\dfrac{1}{4}\right)
+ \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{7}\right)
+ \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{7}-\dfrac{1}{10}\right)\\
& \quad + \cdots + \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{3n-2}-\dfrac{1}{3n+1}\right)\\
&= \dfrac{1}{3}\left(1-\dfrac{1}{3n+1}\right)\\
&=\dfrac{n}{3n+1}\end{align*}

極限を考えると\[
\dlim{n \to \infty}\dfrac{n}{3n+1}=\dlim{n \to \infty}\dfrac{1}{3+\dfrac{1}{n}}=\dfrac{1}{3}
\]で,収束します!

では,最初からきちんと解答を書いてみようか。

解答

第 $n$ 項までの部分和を $S_n$ とすると,

\begin{align*}
S_n &= \dfrac{1}{1 \cdot 4}+\dfrac{1}{4 \cdot 7}+\dfrac{1}{7 \cdot 10} + \cdots + \dfrac{1}{(3n-2)(3n+1)}\\
&=\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{1}-\dfrac{1}{4}\right)+ \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{7}\right)
+ \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{7}-\dfrac{1}{10}\right)\\
& \quad + \cdots+ \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{1}{3n-2}-\dfrac{1}{3n+1}\right)\\
&= \dfrac{1}{3}\left(1-\dfrac{1}{3n+1}\right)
\end{align*}

よって,\begin{align*}
\dlim{n \to \infty}S_n = \dlim{n \to \infty}\dfrac{1}{3}\left(1-\dfrac{1}{3n+1}\right)=\dfrac{1}{3}
\end{align*}

実は,$S_n$ の計算は最後までしない方が極限を求めやすかったりする。

あ,そうか。

深いトコ

今では,無限級数が有限の値に収束するということは普通に使われているんだが,昔はそうでもなかったらしい。それを物語る次のような有名な問題がある。ギリシャ時代の哲学者ゼノンが提唱したといわれている(諸説あり)。

アキレスと亀のパラドックス

足の早いことで有名なギリシャ神話の英雄アキレスが,足の遅いことで有名な亀を追いかける。亀のスタート地点を $\mathrm{T}_0$ とする。アキレスが先ほど亀がいた $\mathrm{T}_0$ に到達したとき,亀も遅い足ではあるが,少しは前に進むので,$\mathrm{T}_1$ 地点に到達する。続いて,アキレスがこの $\mathrm{T}_1$ 地点に到達したとき,亀はまた少し前に進んで $\mathrm{T}_2$ 地点に到達する。このことを何度繰り返しても,アキレスは亀に追いつくことはない。したがって,アキレスは亀に永遠に追いつくことはできない!

あれ? 追いつけないぞ? なんでだ?

普通に考えたら,追い付きますよね?

この操作を何度やってもアキレスが亀に追いつくことはないというのは確かなんだが,かかる時間は無限なのか?ということを考えてみよう。この話はかなり有名な話なので,調べると色々と出てくると思うよ。