無限等比級数
問題
次の無限等比級数の収束,発散について調べ,収束する場合はその和を求めよ。
- $1+ 3 + 9 + \cdots$
- $\retuwa{n=1}{\infty}\dfrac{1}{2^n}$
- 初項が $3$ で公比が $-\dfrac{1}{2}$
無限等比数列の各項を $+$ 記号で結んでできる無限級数を無限等比級数という。
無限等差級数というのはないんですか?
もちろん,そういうものを考えることはできるだろうけど,初項と公差がどちらも $0$ のとき以外は,常に発散するからあまり話題にすることがない。
なるほど。無限等比級数は収束することもあるんですね。でも,(1)はどう考えても発散だ!
ちゃんと基本に忠実に考えた方がいいんじゃない? 第 $n$ 項までの部分和を $S_n$ とすると,等比数列の和の公式を使って\[
S_n = \dfrac{1-3^n}{1-3} = \dfrac{3^n-1}{2}
\]$3^n$ は正の無限大に発散するから,この無限等比級数は正の無限大に発散!
そうだね,まずはそのように基本に忠実に考えよう。
じゃあ(2)は,\[
\dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{4} + \dfrac{1}{8} + \cdots
\]となるから,初項が $\dfrac{1}{2}$ で公比も $\dfrac{1}{2}$ だ。ということは,部分和 $S_n$ は\[
S_n = \dfrac{\dfrac{1}{2} \left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^n\right\}}{1-\dfrac{1}{2}}=1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^n
\]になるから $1$ に収束!
(3)は,部分和 $S_n$ が\[
S_n = \dfrac{3\left\{1-\left(-\dfrac{1}{2}\right)^n\right\}}{1-\left(-\dfrac{1}{2}\right)} = 2\left\{1-\left(-\dfrac{1}{2}\right)^n\right\}
\]になって,$2$ に収束!
よくできました。では,解答を……といきたいところだが,その前に,無限等比級数の収束,発散について少し整理しておこう。初項が $a_1$ で公比が $r$ の無限等比級数について考えるよ。第 $n$ 項までの和を $S_n$ とすると,$S_n$ はどう表される?
公式そのままで,\[S_n = \dfrac{a_1(1-r^n)}{1-r}\]です!
本当にそれでいいかな?
あ,$r=1$ のときは分母が $0$ になってしまう。
おっと,そうだった。$r=1$ のときはあの公式は使えないんだった。$r=1$ のときは\[
S_n = a_1 + a_1 + a_1+ \cdots + a_1
\]で,$n$ 個の $a_1$ を足すから,\[
S_n = na_1
\]
そう。つまり\[
S_n = \begin{cases}
\dfrac{a_1(1-r^n)}{1-r} & (r \neq 1 \text{のとき})\\
na_1 & (r = 1 \text{のとき})
\end{cases}\]だね。では,この $S_n$ が収束するのはどんなとき?
$-1<r<1$ のときは $\dlim{n \to \infty}r^n =0$ だから,\[
\dlim{n \to \infty}S_n=\dfrac{a}{1-r}\]収束だ! $r>1$ や $r \leqq -1$ のときは $\{r^n\}$ が発散して $S_n$ も発散だ。$r=1$ のときは $1^n=1$ だから収束するのかな……。
いや,$r=1$ のときは $S_n = na_1$ だから……。
あ,そうだった。$na_1$ の $n$ がどんどん大きくなるから,$\infty \times a_1$ の形になって発散だ!
ふふふっ。実はもう一つ見落としていることがあるんだけどな……。では,ここで無限等比級数の収束,発散についてまとめよう。
無限等比級数とその和
初項が $a_1$,公比が $r$ の無限等比級数が収束するための必要十分条件は\[
a_1 = 0 \quad \text{または} \quad -1 < r < 1
\]
- $a_1=0$ のとき,この無限等比級数の和は $0$
- $-1 < r < 1$ のとき,この無限等比級数の和は $\dfrac{a_1}{1-r}$
あ,そうか。初項が $0$ だったら $r$ がどんな値だったとしても,この無限等比級数は\[
0 + 0 + 0 + \cdots
\]だから,和は $0$ だ!
\[a_1=0 \ \text{または} \ -1<r<1\]が収束するための必要十分条件だから,この条件の否定である\[a_1 \neq 0 \ \text{かつ} \ 「r \leqq -1 \ \text{または} \ 1 \leqq r」\]が発散するための必要十分条件になる。いうわけで,この性質を使いながら問題の解答を整理すると,次のようになる。
解答
- 初項は $0$ でなく,かつ公比 $3$ が $1$ より大きいから発散。
- 公比 $\dfrac{1}{2}$ は $-1 < \dfrac{1}{2} < 1$ を満たすから収束し,また,初項が $\dfrac{1}{2}$ であるから,求める和は\[
\dfrac{\dfrac{1}{2}}{1-\dfrac{1}{2}} = 1 \cdots (\text{答})
\] - 公比 $-\dfrac{1}{2}$ は $-1 < -\dfrac{1}{2} < 1$ を満たすから収束し,求める和は\[
\dfrac{3}{1-\left(-\dfrac{1}{2}\right)} = 2 \cdots (\text{答})
\]
$-1 < r < 1$ のときは,部分和を計算せずに,いきなり $\dfrac{a_1}{1-r}$ で和を計算していいんですね?
いいよ。
深いトコ
そんなに深い話ではないけど,次の図を開いてくれ。
面積 $1$ の紙の左半分に色が塗っている。色の塗られた部分の面積はもちろん $\dfrac{1}{2}$ だよね。
面積 $1$ の半分だから,そうですね。
では,まだ色を塗っていない部分のうちの半分に色を塗ろう。
今塗った部分の面積は $\dfrac{1}{4}$ ですね。
これを繰り返すよ。。
この操作を限りなく繰り返していくと,色を塗った部分の面積の合計はどうなる?
紙全体に限りなく近づいていくから,$1$ に近づくんですね!
これってつまり,無限級数 $\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{8}+\cdots$ が収束してその和が $1$ になるっていうことの説明ですか?
そういうこと。問題の(2)の結果を図で表したんだ。