極限の計算(無理式)

問題

次の極限を求めよ。

  1. $\dlim{n \to \infty}(\sqrt{n+3}-\sqrt{n+2})$
  2. $\dlim{n \to \infty}(\sqrt{n^2+3n}-n)$

また $\infty – \infty$ の形だ。前のように共通因数をくくるわけではなさそうだけど……。

これは,やり方を知らないとなかなか難しいと思うので,ヒントだ。まず $\sqrt{n+3}-\sqrt{n+2}$ を $\dfrac{\sqrt{n+3}-\sqrt{n+2}}{1}$ と無理矢理に分数の形と考えて,この分数の分母と分子に $\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2}$ をかけてみよう。

\[
\dfrac{(\sqrt{n+3}-\sqrt{n+2})(\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2})}{\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2}}
\]になるから,分子を展開すると\[
\dfrac{(n+3)-(n+2)}{\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2}}=\dfrac{1}{\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2}}
\]

なんか,分母の有理化みたいね。

有理化されたのは分子だから,「分子の有理化」だね。さて,極限はどうなるかな?

分母が限りなく大きくなるから,極限は $0$ ですね。

いいでしょう。では(2)だ。

さっきと同じように,分子の有理化をすればいいんですね。\begin{align*}
& \sqrt{n^2+3n}-n\\
&= \dfrac{(\sqrt{n^2+3n}-n)(\sqrt{n^2+2n}+n)}{\sqrt{n^2+3n}+n}\\
&= \dfrac{(n^2+3n)-n^2}{\sqrt{n^2+3n}+n}\\
&= \dfrac{3n}{\sqrt{n^2+3n}+n}
\end{align*}

今度は,$\dfrac{\infty}{\infty}$ の形の不定形になりましたね。

不定形は次の記事で学んだね。今回もあのときと同じような考え方で解決できるよ。詳しくは下の講座だ。

分母と分子を $n$ で割ればいいのかな?

やってみよう。\[
\dfrac{3}{\sqrt{1+\dfrac{3}{n}}+1}
\]だから,お,収束しそうだ。

ちょっと待って,ルートの中はどうやったの?

$\sqrt{n^2+3n}$ を $n$ で割るから\[
\dfrac{\sqrt{n^2+3n}}{n}=\sqrt{\dfrac{n^2+3n}{n^2}}=\sqrt{1+\dfrac{3}{n}}
\]というふうに考えたよ。

今は,$n$ は自然数と考えていいので,それで大丈夫だ。もし $n$ が負の数になる可能性があるときは $n=\sqrt{n^2}$ が成り立たないから気をつけて。その場合は,\[
\dfrac{\sqrt{n^2+3n}}{n}=\sqrt{\dfrac{n^2+3n}{n^2}}
\]の変形はできないよ。さあ,解答だ。

解答

  1. \begin{align*}
    &\dlim{n \to \infty}(\sqrt{n+3}-\sqrt{n+2})\\
    &=\dlim{n \to \infty}\dfrac{(\sqrt{n+3}-\sqrt{n+2})(\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2})}{\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2}}\\
    &=\dlim{n \to \infty}\dfrac{(n+3)-(n+2)}{\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2}}\\
    &= \dlim{n \to \infty}\dfrac{1}{\sqrt{n+3}+\sqrt{n+2}}=0 \cdots (答)
    \end{align*}
  2. \begin{align*}
    &\dlim{n \to \infty}(\sqrt{n^2+3n}-n)\\
    &= \dlim{n \to \infty}\dfrac{(\sqrt{n^2+3n}-n)(\sqrt{n^2+3n}+n)}{\sqrt{n^2+3n}+n}\\
    &= \dlim{n \to \infty}\dfrac{(n^2+3n)-n^2}{\sqrt{n^2+3n}+n}\\
    &= \dlim{n \to \infty}\dfrac{3n}{\sqrt{n^2+3n}+n}\\
    &= \dlim{n \to \infty}\dfrac{3}{\sqrt{1+\dfrac{3}{n}}+1}=\dfrac{3}{2} \cdots (答)
    \end{align*}